INTERVIEW

2018.02.27

Interview – 画家/Yuma Yoshimura

Text : Takahiro Naito

《Yuma Yoshimura》
1980年 東京生まれ。多摩美術大学絵画学科版画専攻卒業。
主な個展に「In-to-You」(A Word of Art、南アフリカ・ケープタウン、2011年)、「The Burning Silence」(Montana Gallery、スペイン・バルセロナ、2013年)、「beyond the shapes」(Calm & Punk Gallery、東京、2017年)がある。
また、2013年にロシアのウラジオストク・ビエンナーレに参加。現在は東京を拠点に活動している。

ー光と闇という相反する概念から生まれた作品を創造するYuma Yoshimura 。
 「生」「生きる」ということをテーマに創作を続けている彼の成り立ちの過程を追うべくお話をお伺いした。

幼少時代に寵愛を受けたグラフィックデザイナーの叔父に強く影響を受け、小学6年の時にデザイナーになりたいという夢を持ち、中学校では美大進学を視野に入れていた。
その後、多摩美術大学に入学。
その頃のYuma Yoshimuraは版画、リトグラフを選択し、現在よりも色濃くドロドロとした作品をモノクロで表現し、ダークでカオス的な世界観を構成していた。

————–

もがきながら生き続けた20代

大学4年の頃、突如アルバイトに行けなくなる事態が発生し、その後医師から鬱病の診断。入院を1ヶ月した末、周囲の方々の協力の下で卒業を可能にした。
卒業後はアルバイトしながら作家生活をしていたが、鬱が再発してしまいドクターストップがかかる。
ふたたび復活したが、その頃の自分自身に劣等感を強く抱くようになってしまっていた。その解決の一つの方法として自身を他者と比較してしまう事を止めようと考え、もやもやとした日常の思考の路線変更を強制的に施し自分自身を取り戻した。

その頃出会った日系ブラジル人の彫師、JUN MATSUI氏の作風や生き方、様々な表現方法に強く影響を受け、そして自分自身で基礎構築を求めて突如数ヶ月間タイへ彫師修行に向かう。
伝手も無い飛び込みのスタジオで墨入れの修行を行った。
帰国前にTATOOのデザインを並行して行なっていたが、Yuma Yoshimuraにとっては彫るという行為よりも、描くことの方が自身にとって俄然面白くその後の興味は絵を描くことにのみフォーカスするようになっていった。

帰国後は従前よりリハビリを兼ねてシューズにアートワークをペイントする事を行っていたが、次第に平面作品のみに意識が向いていった。
その意識を確実なものとしてはっきりと捉えた事象は、ドイツで行った個展時「ペイントシューズはアートとして評価されない」という事、また、平面作品を当たり前のように購入していくさまを目の当たりにした瞬間「絵は売れない」という固定観念、つまり精神的な壁がいとも簡単に崩れ落ちた瞬間を体験した時に、画家として平面作品のみを制作していこうと心に決めたのであった。

そしてYuma Yoshimuraは、まっすぐに30代を迎える。

————–

30代になり南アフリカで得た画家としての転機

2011年南アフリカ。緻密な作風と有機的なものを描いた作風をミックスしてYuma Yoshimuraの新境地に到達することが出来た。また、新しく壁画制作も取り入れた。

この頃から作家活動が自己の確立に繋がった。自分自身のアートを追求したいと強く思い、自己証明を作品としてもしっかりと持てるようになる。
試行錯誤の末の新しいアプローチを編み出したのである。これがYuma Yoshimuraの南半球での認知構造変容と表現できるのではなかろうか。

最近ではクレヨンを使用したり、それぞれの技法を更にミックスして昇華させたりと様々なチャレンジを続けている。

抽象肖像や心象風景を描くことが多い昨今の活動のテーマは 「生と死」というか、「生」である。
そこは全くもってブレが無い。

最新作、まぎれこんでしまえば シリーズでは、群集心理の寂しさ、自己顕示欲、その傍観者、それらの身近な関係性、ミクロな関係性から例えるマクロな社会システム、その矛盾。
また、関係性の中でも強く生きていたいという思い、生きていかなければならない。生きなければ。という強い生命力みなぎる作品となっている。
1日1枚のスケッチを朝の日課とするYuma Yoshimuraのスケッチブックは、自身のカルテであり、日記であり、記録であるのかもしれない。

生命の記録であり記憶。あるいは希望。
それらが新しく生まれる作品たちに直結している。
故にその作品たちはYuma Yoshimuraの息遣い、鼓動さえも感じ取れるような作品となっている。

Yuma Yoshimuraの一見不可解なモノクロームの世界の余白には、生と希望が詰まっているように私には見えた。

————–

《展示情報はこちらからどうぞ》
▼YUMA YOSHIMUURA SOLO EXHIBITION「まぎれこんでしまえば-magirekonde-shimaeba」(3/10(sat)~4/1(sun))▼
http://www.quietnoise.jp/event/yuma-yoshimura-exhibition_magirekonde-shimaeba.html

▼【同時開催:アーカイブ展】 YUMA YOSHIMUURA SOLO EXHIBITION「逆走-gyakusou」(3/17(Sat)-4/1(sun))▼
http://basementginza.jp/yuma-yoshimura/

BACK TO INTERVIEW LIST